【対談】鉄道の収益をあげたい

※イリオモテヤマネコの入面手潤一郎博士が超人類的立場から現代文明を批評する「対談」シリーズ。

 

庄司(「JIGEMON」作者。以下、S)「なあ博士。我々のいる島原半島には島原鉄道(※長崎県諫早市と島原市を結ぶ私営鉄道)というのが走っているだろう? そこが赤字で困っているらしい。君、何か収益を上げるいいアイデアはないか」

 

いりおもて博士(以下、いり)「島原鉄道というのは、君たち人間の住む世界の島原鉄道のことかい?」

 

S「そうさ。僕の住む世界と君たちの住む世界は確かに似ているが、まったく同じというわけでもないだろうからね」

 

いり「とにかく収益をあげればいいのだな」

 

S「そうだ。何かいい考えがあるのかい」

 

いり「じゃあ広告をやりたまえ」

 

S「広告? 宣伝なら今だってやっているだろう。まだ足りないというのかい」

 

いり「そうじゃないよ。企業の広告を出すんだ。車両の外壁にロゴを載せたまえ」

 

S「ロゴ!? F1のマシンとかアメリカズカップのヨットとか、そういうことを言っているのか」

 

いり「そうだ。Emirates航空とか、MicroSoftとか、Oracleとか、SoftBank、Jeep・・・そういうところから広告料をもらって車体にロゴを描いて走らせるんだ」

 

S「そりゃあ壮大な計画だ」

 

いり「まだあるぞ。すべての駅にカフェを併設する。コーヒー1杯30円で飲めるカフェだ」

 

S「30円!? そんなに安くできるものか」

 

いり「それができるのだ。全面的に広告を使いたまえ。店員の制服は全員ツール・ド・フランスの選手のユニフォームのように企業のロゴをあちこちにつける。皿にも描くのだ。コーヒーカップの底にも描く。コーヒーを飲み終わると「Just Do It. NIKE」と文字が出てくる。コーヒーの名前も、「明治安田生命カフェオレ」とか「日立インスパイアザネクストカプチーノ」とか「新春サッポロビールスペシャルカフェラテ」などと、名前入りにしたまえ。広告料がたっぷりと入る」

 

S「レジで店員さんが『ご注文を確認します。明治安田生命カフェオレのレギュラーサイズがおひとつ、日立インスパイアザネクストカプチーノのSサイズがおひとつですね』などといちいち言うわけか。実にわずらわしいなあ。で、それは何か特別な豆を使うのか?」

 

いり「いや、同じだよ。純粋に名前だけが違う。毎年名前を変更して、そのつど広告料をとる」

 

S「サッポロビールカプチーノじゃ、いったいどんな飲み物かわからないよ」

 

いり「まあ食べ物の名前は避けた方がいいかもしれないな。さらに店内にはモニターを置き、常時広告を流す。カップヌードルでもプレイステーション4でも自衛隊の勧誘でもなんでもいい。合間合間にはサブリミナル効果用に別の広告のカットをはさむ。コースターにも広告を載せる。広告の文字を拡大すると、さらに小さな別の広告になっている。NIKEの文字を拡大するとアディダスのマークがたくさん出てくるわけだ」

 

S「そのアディダスのマークをさらに拡大すると今度はプーマのマークが出てくるのかね。マトリョーシカみたいに」

 

いり「フラクタル広告というんだ。僕が考案した。今に流行るぜ」

 

S「なあ博士。いったい誰がシャーロック・ホームズみたいに日頃から虫眼鏡を持ち歩くのかね? 君は今も持っているのか?」

 

いり「店内に置いたらいいじゃないか。テーブルごとに一つずつ置くんだ。少しは頭を使いたまえよ。もちろん虫眼鏡の持ち手にも広告を載せる」

 

S「その持ち手の広告の文字が拡大できないじゃないか。虫眼鏡をくるくる振り回しながら「どうしても見れないよ~」とか叫ぶことになるぞ」

 

いり「ほかのテーブルから借りたまえ! まったく君は愚かだな。人間というのは、みな君のように愚かなのかね?」

 

S「失敬だな。人間はみな僕と同じくらい賢いぞ」

 

いり「まあいい。ほかにもあるぞ。いっそ駅名を変えたらどうだい?」

 

S「なんだと!?」

 

いり「コカ・コーラ大三東駅とか、ヤフー松尾駅とか、LINEモバイル島原駅とかそういった名前にしたまえ。それも3年ごとに変更する。そのつど広告料が入る」

 

S「駅の名前がそんな頻繁に変わっていいものか。利用客が混乱するぞ。それに君、島原鉄道はずいぶん古い鉄道らしいぜ。駅も地域の伝統の一部なんだ。みだりに変えたりしちゃまずいだろう」

 

いり「そりゃ伝統かもしれんがね、そもそも利用客が少ないからこういう話をしているんじゃないのかい」

 

S「それはそうだが、駅名が変わるたびに地図や看板やガイドブックを書き直すというのか。大変なお金がかかるだろう」

 

いり「だからその分も含めた広告料を取るのだよ」

 

S「うーん。それにしても、そんな大企業が何億円の広告料を出してくれるだろうか?」

 

いり「なに、払ってくれるさ。君たち人間の世界は今だってそんな広告に満ち溢れてるんじゃないのかね。まあ、いずれにせよ君の交渉力しだいだね」

 

S「無茶を言うな。僕にそんなことができるものか」

 

いり「ではしかたないな。他の方法を考えるとしよう。続きはまた今度だ。僕は腹が減った。何か食べに出ようじゃないか」

 

S「いいね。食べ物と言えば、君はやはり魚が好きなのか?」

 

いり「僕らイリオモテヤマネコはなんでも食べる。もちろん魚も好きだ。そうだ、この近くにうまい魚を食わせる店がある。そこへ行こう」

 

S「よし。案内してもらおう」

 

<終わり>

――――――島原半島・長崎県の特産物紹介―――――――

  

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作品
アトリエ ンズリ・サナ / Atelier NZURI SANA

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